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2017.05.14 Sunday

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    斎藤美奈子『物は言いよう』は実用書?!

    2006.09.19 Tuesday

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      前々回、好きだった作家が突然メジャーになると
      複雑な気持ちになる(小川洋子『博士の愛した数式』を読む
      という話を書きましたが、
      文芸評論家の斎藤美奈子さんも、
      私にとって、
      「ちょっと、ちょっと
      私は前から彼女に注目してたんだからね〜」
      と誰かに自慢したくなる存在です。
      (しないけど)

      『妊娠小説』を読んで「おお、これは面白い!」
      その語り口の痛快さに一気にファンになり、
      いい書き手を見つけたとほくそえんでいたら、
      いつの間にか売れっ子になっていました。
      (といっても、限定された世界の中で、ですが)

      私は、好きな作家の本は
      手元においておきたい性分です。

      蔵書を増やすには、
      新作が出るたび新刊で買うのが
      一番手っ取り早いですが、
      私は、古本屋に出まわるか、文庫になってから
      購入するようにしています。
      (『博士の愛した数式』を、初版発行後
      3年もたってから読んだのも、そういう理由からです)

      これは、経済的なことももちろんあるけれど、
      文庫はともかく「古本」に関しては、
      「趣味」みたいなものですね。
      欲しい本を古本屋で見つけると、
      得したような気がしてうれしい、という・・・。

      島に来てからは古本屋に行く機会がほとんどなくなったので、
      ネットの古本屋を利用しています。

      斎藤美奈子さんの蔵書も、
      古本と文庫で少しずつ増やしており、
      半年ほど前に、
      『物はいいよう』(2004年発行)を
      ネットの古本屋で手に入れ、
      読むのを楽しみにしていました。

      資格試験の対策のため、
      半年間、本を読むのをやめており、
      試験が終わったら、
      まっさきにこの作品を読もうと思っていました。

      本書のキーワードは「フェミコード」

      「フェミコード」とは何か?
      以下、アマゾンのサイトからの引用。

      FC(フェミコード)とは、性や性別にまつわる
      「おかしな言動」に対するイエローカード。
      思わぬセクハラを防ぐ60の心得を紹介。
      笑いながらFC感覚が自然に身につく。
      『噂の真相』連載「性差万別」に大幅に加筆し単行本化。


      性や性別についての望ましくない言動を検討するための基準です。
      しかし、意識のありようまではとやかくいいません
      (心の中で「このブス」「このクソババア」と思うのはかまわない。)
      せめて、おおやけの場ではそれに相応しいマナーを身につけよう、
      との趣旨で考案されました。本書を通して、
      笑いながらFC(フェミコード)感覚を身につければ、
      いやーなセクハラ、思わぬセクハラとは、もうさようならです。


      読後感。

      実際にあった、政治家などの「失言」や、
      さまざまな人物の著作から
      「フェミコード」にひっかかる文面を引っ張り出してきて、
      一刀両断に切るそのあざやかさはさすが。

      でも私には、ちょっと、物足りなかったです。

      アマゾンやmixiのレビューを読むと、
      ほとんどの人が「面白かった」「ためになった」と書いているので、
      そっちの方が、一般的な意見なのかもしれないけれど、
      斎藤節はこんなもんじゃないぞ!という感じ。

      でも、はじめて斎藤美奈子の著作を読んだ人
      (とくに男性)にとっては、
      新鮮で、面白いのかもしれません。

      ちなみに著者はあとがきで
      「この本は、評論でもエッセイでもなく実用書である。
      実用書が必要だと思ったのだ」
      と書いているのですが、
      これは著者ならではの辛口のユーモアなのでしょうか。

      「部下の女の子にうっかりセクハラ発言しないように」
      なんて本書を手に取るおじさんも
      実際にいたりして・・。

      せっかくだから「知的○○文庫」とか
      「○○新書」とかが版権を買い取って、
      「うっかりセクハラ発言をしないための心得60条」
      とでも題して出版したらどうでしょうか。
      (本当に、これ、60条の心得が書かれているんです)

      そうすれば、自分でそうとは思わずに
      セクハラ発言を繰り返しているおじさん・おばさんも
      (発言主は男とは限らない)
      世の中から少しは減るのではないか?

      なんて思ったりする私でした。

      ちなみに『妊娠小説』はどんな本なのかというと・・

      またまた、ちょっと手抜きして
      アマゾンからの引用。


      『舞姫』から『風の歌を聴け』まで、
      望まない妊娠を扱った一大小説ジャンルが存在している
      ―意表をついたネーミングと分析で、一大センセーションを巻き起こした処女評論。
      待望の文庫化。

      日本の近現代文学に
      「妊娠」が小説の中で重要なポイントを占める「妊娠小説」
      とでも呼ぶべきジャンルがあることを発見した著者が、
      その独自の視点と手法で
      妊娠小説のあゆみ・しくみ・なかみを解明する。


      う〜ん。この紹介だとあんまり面白そうじゃないですね。

      ちょっと、本の冒頭を引用

       
      日本の近現代文学には「病気小説」や「貧乏小説」とならんで
      「妊娠小説」という伝統的なジャンルがあります。(略)
       小説のなかで、ヒロインが「赤ちゃんができたらしいの」と
      これみよがしに宣告するシーンを、そしてそのためにヒーローが
      青くなってあわてふためくシーンを、あなたも目撃したことが
      あるでしょう。(略)
      「妊娠小説」とは、いわば、かかる「受胎告知」によって涙と
      感動の物語空間を出現せしめるような小説のこと、であります。
       しかしながら、旧来の文学史や文学研究、文学批評はこの
      このジャンルを今日まで頑として黙殺しつづけてきました。
      まったく遺憾なことである、といわなければなりません。(略)
       妊娠小説は妊娠小説として正しく評価され。「著者渾身の
      書き下ろし妊娠小説!」といった晴れやかな帯にこそ
      飾られてしかるべきものです。(後略)


      もちろん、こんなことをこの著者が本気で思っているわけはなく、
      本音はこっち。

      時代の空気に俊敏に反応するフットワークのよさ。
      一定の様式にそって組み立てられた、安心と信頼の物語設計。
      「お願い生ませて」といいながら中絶するヒロイン。
      そして、避妊をしない剛胆な主人公。
      妊娠小説というものの特質が、
      いくらか理解していたただけたと思います。


      要するにこの本は、「望まない妊娠」というものを
      キーワードにした文学批評なのですが、
      それを「批評」という堅苦しい形ではなく、
      面白おかしく、笑える形で読みもの的にまとめたところが、
      この人のすごいところだと思います。

      本書にとりあげられた文学作品の一部をあげると・・

      森鷗外『舞姫』
      石原慎太郎『太陽の季節』
      川端康成『山の音』
      三島由紀夫『美徳のよろめき』
      大江健三郎『われらの時代』
      吉行淳之介『闇のなかの祝祭』
      柴田翔『されどわれらが日々-』
      渡辺淳一『野わけ』
      村上春樹『風の歌を聴け』
      橋本治『その後の仁義なき桃尻娘』
      村上龍『テニスボーイの憂鬱』
      辻仁成『クラウディ』

      などなど。

      男性作家だけでなく、女性作家もいます。

      中沢けい『海を感じるとき』
      津島祐子『寵児』
      森瑤子『一種、ハッピーエンド』
      林真理子『ビデオパーティー』
      小川洋子『揚羽蝶が壊れる時』

      など。

      あの有名な作品がどんな風に切られているのか。
      (女性作家の方はあんまりメジャーな作品とはいえない気もするけど)
      ちょっと興味がでてきませんか。

      この作品を書いた後、著者はある文芸誌の元編集者に
      “文学はこんなふうに読むものじゃない”としかられたそうです。

      この逸話を聞いただけでも、
      読んでみたくなりませんか。

      私は再読してみたくなりました。

      興味を持った方は、ぜひご一読下さい。
      笑えること、請け合いです。
      (一部、不愉快になる方もいるかも・・・)





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        コメント
        ningyoさんへ

        こちらこそ、トラックバックとコメント
        ありがとうございます♪

        「L文学」・「戦下のレシピ」は未読なので、
        今度ぜひ読みたいです。

        「モダンガール論」「趣味は読書」も
        面白かったですよ〜

        • by ningyoさんへ←フナリン
        • 2006/09/27 2:57 PM
        TBありがとうございました。
        私も「妊娠小説」で斎藤さんに出会いました。
        それから「L文学」や「紅一点」で、お勉強させていただきましたし、「戦下のレシピ」もいくつかつくってみました。
        いつも切り口の冴えた方だと思います。
        • by ningyo
        • 2006/09/26 7:56 PM
        電脳馬さんへ

        こちらこそ、訪問&コメント
        ありがとうございます。

        そうですよね、7年前は
        こんなにメジャーではなかったですよね。

        「寂しく」感じる仲間がいて、うれしいです(笑)

        >いろいろな人が書いていたのですが、抜群に面白かったのを覚えています。

        斎藤さんは、切り口も語り口も、ほんと冴えてますよね〜
        ああいう芸風って、なかなかないですよね。
        • by 電脳馬さんへ←フナリン
        • 2006/09/21 11:48 PM
        naturelさんへ

        ぜひ一度読んでみて下さい♪

        私もこの記事を書いてから再読したのですが、
        あれ?けっこうまじめな本だったんだなあと(笑)

        「妊娠小説」というキーワードを通してですけど、
        結果的に、優れた小説(あるいは作家)
        は正当に評価されており、うすっぺらな作品は
        その通りに評価しているなあという気がしました。

        文芸評論として、面白いと思います。
        (「風の歌を聴け」の解読なんかあったりして)
        • by naturelさんへ←フナリン
        • 2006/09/21 11:43 PM
        わざわざコメントまでつけて頂きまして、ありがとうございます。

        私が斎藤さんに出会ったのはさかのぼること1999年、雑誌「世界」の増刊号に載った小文でした。いろいろな人が書いていたのですが、抜群に面白かったのを覚えています。

        確かに最近はもうメジャーになってしまった感もあってちょっと寂しいですね(笑)。
        斎藤氏は、ワタシにとっては「注目していたけれど横目で見ながら通り過ごしてきた」という感じの方です。コラムなどはそれなりに読んだりはしていましたが・・・。
        で、『妊娠小説』。とてもおもしろそうです^^
        ワタシの場合、“Amazonのレビュー”段階から「おもしろそう」と思えましたし…^^;
        頭の片隅に留めておいて、機会があればぜひ読んでみたいです♪
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        最近は斎藤さんのお名前を見るとつい、パブロフの犬のように条件反射的にお財布を出す、とか画面上の購入ボタンを押している有様でございます。だって面白いんだもん。  これは今は無い「噂の真相」誌上のコラムが土台になったもので、著者ご本人によれば、「FC」(フ
        • 虫干し映画MEMO
        • 2006/09/26 7:56 PM
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