スポンサーサイト

2017.05.14 Sunday

0

    一定期間更新がないため広告を表示しています

    小川洋子『博士の愛した数式』を読む

    2006.09.05 Tuesday

    0


      自分が愛読していた、
      ちょっとマイナーな作家が
      突然メジャーになってしまったとき、
      みなさんはどんな気持ちになりますか。

      本を読まない方は、
      たとえば芸能人とか、スポーツ選手とかに
      たとえて考えて見て下さい。

      「メジャーになってうれしい」
      という気持ちがある反面、
      「なんか、こんなに売れちゃってつまらない」とか、
      「私は、こんなに売れる前からファンだったんだぞ!」とか、
      思ったりしませんか。

      『博士の愛した数式』がベストセラーになったとき、
      私はまさにそういう感情を抱いたものです。

      著者の小川洋子は、
      私が学生時代から愛読していた作家でした。

      この人の描く、
      淡々としていて、静謐で、ちょっと病的な世界に
      惹かれるものがあったのです。

      芥川賞は受賞しているものの、
      決してメジャーとは言えなかった彼女の著作が、
      ある日突然「本屋大賞」というものに選ばれ、
      あれよあれよとベストセラーになってしまったときには、
      正直、びっくりしました。

      その上、映画化までされるなんて・・・。

      どんな作品なんだろうと気になりながら、
      そのままになっていたのですが、
      (時間が空いたら読もうと、
      文庫は買ってあった)
      先日、やっと読むことができました。
      読後感。

      確かに素敵な話だし、
      そして確かに小川洋子っぽいんだけれど、
      私には合わない・・。

      何しろ「博士の愛した数式」なので、
      「数式」がたくさん出てくるのですが、
      情けないことに、
      「数式」が出てくるだけで、私の脳が無意識に拒否反応を示し、
      ついつい眠気が誘発されてしまう・・。
      (昔から、理数系がまったくダメな人間なので)

      「数式の美しさ」というものに共感できないと、
      この物語の世界にどっぷりつかることは不可能ではないか。

      そう、私は思ってしまいました。

      それに、どうも「いい話」過ぎる気が・・・。

      こんなおだやかな話を書く人ではなかったはずなのですが。

      そう思って、芥川賞受賞作『妊娠カレンダー』を
      15年ぶりくらいに読んでみました。

      うわっ、やっぱちょっと病的・・。

      姉と姉の夫と3人で暮らす主人公(女)は、

      『危険な輸入食品!』
      『出荷までに三種類の毒薬に漬けられるグレープフルーツ』
      『防かび剤PWHには強力な発がん性。
      人間の染色体そのものを破壊する!』
      という説のあるアメリカ産のグレープフルーツを丸ごと使って
      毎日のように手作りのジャムを作るのです。

      「PWHは胎児の染色体も破壊するのかしら」
      と思いながら。

      そして姉は、つわりが終わってから出産まで毎日のように、
      そのジャムを食べ続けるのです。

      『博士の愛した数式』に感動した人たちが、
      この『妊娠カレンダー』を読んだらどう思うんだろう?

      ちなみに『博士の愛した数式』のあとがきで、
      この作品のための取材を受けた数学者の藤原正彦氏が
      著書のことを

      「化粧っけのない、清楚な大学院生のような人」
      「夢見る乙女のようなまなざしで微笑んだり」

      等々、とてもかわいらしい人のように表現しているのですが、
      そんな藤原さんが『妊娠カレンダー』
      を読んだら、さそがしびっくりするだろうなと思います。

      何しろ藤原さんは、

      それにしても「元気に書きつづけています」などという
      何気ない手紙をもらった頃、こんな大胆不敵な野心作に
      とりかかっていたのかと思う。
      くりくりっとした瞳で品よくほほえむ小川さんの姿を
      思い起こすと、女性は怖い、とやはり思ってしまう。


      などと書いているのですから。

      ところで、この記事を書いたあとに、
      この小説について書いたブログ記事を検索してみたら、
      「感動した」「良かった」というものばかり。

      私と同じような感想を抱いたと思われる記事は
      ひとつしかありませんでした。

      どうやら、私の見方は、相当、偏っていたようです。
      まだこの本を読んでいない方は、
      私の意見はあまり参考にされない方がいいと思います。

      そして検索していてもうひとつわかったのが、
      この次の作品も、
      以前の小川作品にあった独特の感じがまったくない、
      「いい話」らしい、ということです。

      もう、昔のような作品は、書かないのかもしれない・・

      そう思うと、
      昔からのファンとしては、
      なんだか、すこし、さびしい気がするのでした。













      スポンサーサイト

      2017.05.14 Sunday

      0
        コメント
        外サ産研さんへ

        こちらこそ、お訪ねいただいてありがとうございます。

        古い作品を読むと、たぶんイメージがずいぶん
        違ってびっくりされると思います(笑)
        『妊娠カレンダー』ぜひ読んでみて下さい。
        • by 外サ産研さんへ←フナリン
        • 2006/09/09 12:07 AM
        JUNちゃんへ

        わたしも「小川洋子の作品だ」と思って読まなかったら、
        きっと泣いたと思うよ(笑)

        『まぶた』は読んでない。読んでみようかな。
        『ホテルアイリス』は、だいぶ昔に読んだので
        あんまり覚えてないけど、
        けっこう猟奇的な話だったよね?

        「博士」じゃない頃の小川洋子の作品を
        JUNちゃんが好きだって言ってくれて
        なんだかうれしいわ。
        『妊娠カレンダー』もぜひ読んでみて下さい。
        (これは、『アイリス』ほどすごくはないよ)

        小川洋子の血液型、気になるところだね(笑)
        今は、「普通の話も書けるのよ」って感じなのかな?
        今後の動向に期待しましょう。

        江國香織さんの作品は「きらきらひかる」
        をかな〜り昔に読んだ記憶がある。
        なかなか良かったような気が・・

        売れて、いい方向に行けばいいけど、
        作風が変わっちゃったりすると、悲しいよね。


        • by JUNさんへ←フナリン
        • 2006/09/09 12:04 AM
        それいゆちゃんへ

        う〜ん。確かにそうかも。
        で、それが映画になって、またブレイクしたりするよね。
        なんか時代が「いい話」を求めてるのかもね。

        >私もメジャーじゃなかったミュージシャンがブレイクしちゃうと一抹の寂しさを感じるわ〜(笑)

        そうそう、そうなのよ〜そういう感じ。
        わかってもらえてうれしいわ(笑)



        • by それいゆさんへ←フナリン
        • 2006/09/08 11:43 PM
        コメント&TBありがとうございました。
        小川氏のイメージを破壊すべく「妊娠カレンダー」今度読んでみます(笑)。
        小川洋子さんの本はむか〜し読んで(タイトル失念)、
        すっかり記憶の彼方状態だったのですが、最近友人に勧められて
        『博士〜』を読みました。心が弱っている時だったので(笑)、純粋さが痛々しくて号泣しました。
        小川さんいいかもな、と思い、その後『まぶた』を読んで、
        あ、小川さんの書く世界ってこっちだったかも、と
        思い出しました。
        現在進行形で『ホテルアイリス』を読んでいますが、
        狂気があって良いですね。『妊娠カレンダー』きっと好きだと思います。読んでみますね。

        小川さんが何型か分からないけれど、もしB型だとしたら、
        「いい話」を書いている気持ちが分かるような気がします。
        きっと、病的な話に戻ってきます。
        病的だからこそ、両方の話が書けるんだと思います。

        自分が密かに注目していた人がブレイクすると寂しいです。
        私は「江國香織」さんがまさにソレでした。
        ブレイクする前に書いていた本の方が、とっても好きだった。
        • by JUN
        • 2006/09/07 9:46 PM
         妊娠カレンダーって本はすっごく気になってたんだけど、読んでない本です。今度、読んでみようっと♪
         近頃、流行っている本ってお涙頂戴物が多くない?
        大体いい話が多くて、そんな本が売り上げいい気がする。

         私もメジャーじゃなかったミュージシャンがブレイクしちゃうと一抹の寂しさを感じるわ〜(笑)
        • by それいゆ
        • 2006/09/07 1:35 PM
        コメントする
        トラックバック
        「博士の愛した数式」小泉尭史 監督出演:寺尾聰 深津絵里 吉岡秀隆 浅岡ルリ子寺尾聰という役者は本当に上手だね・・・深津絵里もいい女優だから、退屈そうなテーマなのに、実にほのぼのとして、心が温まり、静かな展開なのに全く飽きさせない監督も...
        • 映画村
        • 2007/06/10 10:53 PM
        ■子供魂Sat, 02 Jun 2007 08:17:00 0900... 『博士の愛した数式』 という映画で 『子供は大人よりずっと大きい問題を抱えて苦しんでいるものだ』 と言っているのを家の母がやたら感心して、 『お母さんは自分が子供の頃戦中戦後で色々あって不幸だから悲し
        • 映画DVD館
        • 2007/06/02 10:54 AM
        なんという静謐(せいひつ)な世界だろうか。 すべてが美しい。この小説に登場する人々すべてが優しい。こんなに美しくて優しくて、いいのだろうか? 現実感ってものが乏しくないか? しかし読み進むうちに考え直した
        • ぱんどら日記
        • 2006/09/14 10:23 AM
         私は数学が苦手です。おそらくその原因は中学の数学の授業。そのときの内容はさだかではありませんが、それまで特に苦もなく解いていた問題にふと疑問を抱いたのでした。  「はたして、この問題は実生活でなんの役にたつの
        • 新しい現実 -The New Realities (Rebirth)-
        • 2006/09/07 11:29 PM
        この記事のトラックバックURL